Weblogを語源とした「ブログ」は日記や備忘録といった用途で使われており、トラックバック機能やコメント機能などを備え、爆発的に広がりました。近年では、レンタルサーバーなどにおいても標準またはオプションで、その機能を提供する事業者が数多く存在します。
ブログを構築するツールとしては、「a-blog」や「Word Press」などがあります。ここでは、もっともポピュラーなMovable Typeを取り上げ、VPSカスタムサーバーを例に実際にインストール手順を紹介します。
なお、Mobavle Typeはライセンス販売されている製品ですが、「個人ライセンス」が存在し、利用条件を満たす限り無償で使用することができます。ここでは、この個人ライセンスを使用します。
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1-1. Movable Typeのダウンロード
Movable Typeは、WebベースのアプリケーションでWebサーバーが必要です。また、ソースコードがPerlスクリプトで記述されていることから、Perl(バージョン5.6.1以上、5.8.1以上を推奨)およびRDBMSが必要となります(動作環境については、Movable Typeのサイト)を参照してください)。
なお、RDBMSはMySQL 4.0以降、PostgreSQL 8以降の両方が使用できますが、前回、MySQLのインストールを行っているので、ここではMySQLを使用するものとします。まずは、これらの環境が整っているか確認します。
$ ssh -l admin vps-tokusyu.com
admin@vps-tokusyu.com's password:
Last login: Wed Aug 22 02:47:20 2007 from 125x103x245x240.ap125.ftth.ucom.ne.jp
$ yum list installed httpd perl mysql-server
Loading "fastestmirror" plugin
Installed Packages
httpd.i386 2.0.52-32.3.ent.centos installed
mysql-server.i386 4.1.20-2.RHEL4.1 installed
perl.i386 3:5.8.5-36.RHEL4 installed
上記のように表示されれば、Movable Typeに必要とされるツールはインストールされています。このほかに、使用するRDBMSに応じてPerlのデータベースモジュールが必要となります。必要なモジュールがインストールされているか否かは、Movable Typeチェック用CGI「mt-check.cgi」により確認できますので、プログラムファイルの配置後に実行することにします。
環境が整っていることを確認したら、Movable Typeのプログラムファイルをダウンロードします。まず、ECバイヤーズのWebサイトにある「無償ダウンロード受付画面」にアクセスし、必要事項を入力することでダウンロードページに遷移することができます。
図:無償ダウンロード受付画面(画像をクリックすると拡大表示します)
「Movable Type 個人ライセンス(無償)」ページの利用許諾を確認し、問題がなけれ名前とメールアドレスを入力することで、入力したメールアドレス宛にダウンロードの認証ページのURLと認証キーが送られてきます。認証ページにアクセスし、認証キーを入力することで、プログラムファイルのダウンロードを行います。
図:ダウンロード認証画面(画像をクリックすると拡大表示します)
こうした手続きはローカル側のPCで行うことになるでしょう。そこでプログラムファイルをVPSサーバーに送信するか、VPSサーバーから他のコンピュータにアクセスしてダウンロードする必要があります。一般的にはFTPを使用することになると思います。@YMCのカスタムサーバーには標準でvsftpdがインストールされています。vsftpdは初期状態では停止状態にあるので、コマンドを入力して起動します(詳細については、今回は割愛いたします)。
$ su -
Password:
# /etc/init.d/vsftpd status ←vsftpdの状態を確認
vsftpd is stopped ←停止状態
# /etc/init.d/vsftpd start ←vsftpdの起動
Starting vsftpd for vsftpd: [ OK ]
FTPサーバーが起動したら、プログラムファイルをアップロードします。今回は、アーカイブファイルをそのままアップロードし、サーバー側で展開することにします。こうすることで、プログラムに含まれる文字コードや改行コードの違いによる無用なトラブルを回避することができます。
PCでファイルを展開してアップロードし、FTPクライアントでパーミッションの設定を行うことも可能です。その場合、プログラム(拡張子が.cgiのファイル)のパーミッションは「644」の状態になります。そのままでは実行権がないため動作しないので、パーミッションを「755」に変更する必要がある点に注意してください。
1-2. データベースの作成
Movable Typeはデータベースを使用することから、新たにデータベースの作成が必要となります。ここではMySQLを使用するので、以下のように操作してMovable Type用のデータベースを作成します。
# su mysql ←ユーザをmysqlにスイッチ
bash-3.00$ mysqladmin create MT -u root -p ←データベース「MT」を作成
Enter password: ←MySQLのパスワードを入力
bash-3.00$
データベースが作成できているか確認します。
# mysql -u root -p
Enter password:
Welcome to the MySQL monitor. Commands end with ; or g.
Your MySQL connection id is 2520 to server version: 4.1.20
Type 'help;' or 'h' for help. Type 'c' to clear the buffer.
mysql> show databases;
+----------+
| Database |
+----------+
| MT | ←データベース「MT」ができている
| mysql |
| openpne |
| test |
+----------+
4 rows in set (0.00 sec)
mysql> exit
Bye
#
2-1. プログラムファイルの展開
続いて、アップロードしたプログラムアーカイブを展開します。
$ unzip MT-4_0-ja.zip ←アーカイブ「MT-4_0-ja.zip」を展開
Archive: MT-4_0-ja.zip
creating: MT-4.0-ja/
creating: MT-4.0-ja/tmpl/
creating: MT-4.0-ja/tmpl/feeds/
inflating: MT-4.0-ja/tmpl/feeds/feed_entry.tmpl
inflating: MT-4.0-ja/tmpl/feeds/error.tmpl
inflating: MT-4.0-ja/tmpl/feeds/feed_comment.tmpl
inflating: MT-4.0-ja/tmpl/feeds/feed_chrome.tmpl
inflating: MT-4.0-ja/tmpl/feeds/login.tmpl
inflating: MT-4.0-ja/tmpl/feeds/feed_system.tmpl
inflating: MT-4.0-ja/tmpl/feeds/feed_ping.tmpl
inflating: MT-4.0-ja/tmpl/feeds/feed_page.tmpl
creating: MT-4.0-ja/tmpl/cms/
inflating: MT-4.0-ja/tmpl/cms/list_role.tmpl
(以下省略)
2-2. プログラムファイルの配置
展開されたファイルは「MT-4.0-ja」というサブディレクトリに格納されています。このサブディレクトリ内に含まれるファイルをCGIディレクトリに移動します。
$ su ←管理者にスイッチ
Password: ←管理者のパスワードを入力
# cd MT-4.0-ja/
mv * /var/www/cgi-bin/ ←すべてのファイルをCGIディレクトリに移動
以上でプログラムの展開と実行環境への配置は終了です。
ここで、MySQL接続用のPerlモジュールがインストールされているかを含めてチェックします。「http://www.vps-tokusyu.com/cgi-bin/mt-check.cgi」へアクセスすると、システムの情報が表示されます(なお「http://www.vps-tokusyu.com/」の部分は個人の環境に合わせて変更してください)。先頭の「System Information」に「Movable Type configuration file not found.」となっていますが、現時点では設定を行っていませんので問題ありません。
図:Movable Type System Check(画像をクリックすると拡大表示します)
このページをスクロールすると、「Checking for Data Storage Modules」という項目があります。RDBMSとしてMySQLを使用する場合には、DBIのバージョン1.21以上またはDBD::mysqlが必要ですが、双方ともインストールされているので、MySQLが使用できることが確認できます。
図:DBIのバージョン確認(画像をクリックすると拡大表示します)
もしここで、エラーメッセージが表示される場合、プログラムファイルにパーティションの実行権がないことが考えられます。そのような場合、以下のようにコマンドを実行してください。
# chmod -R 755 /var/www/cgi-bin⁄*.cgi
3-1. Movable Typeの設定
Movable Typeは、バージョン3.3以降ではGUIによって設定ファイル(mt-config.cgi)の編集が行えるようになっており、本稿で取り上げているバージョン4でも同様に操作できます。
ただし、初期設定のまま実行すると、ディレクトリ「mt-static」にアクセスできないというエラーメッセージが表示されます。その場合の対処として、cgi-bin以下のアクセス権限を変更する方法もありますが、セキュリティ面では望ましいことではありません。そこで今回は、アクセス可能なパスに移動することにします。
ここでは、ドキュメントルート以下に「MT4」というディレクトリを作成し、その中に移動するものとします。また、ユーザをApache HTTP Serverのユーザ、グループに変更します。
なお、このディレクトリは、公開ファイルのドキュメントディレクトリとして併用します。
# mkdir /var/www/html/MT4 ←ディレクトリ作成
# cd /var/www/cgi-bin/MT4/ ←プログラムファイル格納ディレクトリに移動
# mv mt-static/ ../html/MT4/ ←ディレクトリ「mt-static」を移動
# cd ../html
# chown -R apache:apache MT4 ←ユーザ、グループを変更
これで、初期設定を行い設定ファイルである「mt-config.cgi」を生成することができます。「http://www.vps-tokusyu.com/cgi-bin/mt-static/mt-wizard.cgi」にアクセスしてください(なお「http://www.vps-tokusyu.com/」の部分は個人の環境に合わせて変更してください)。すると、ウィザード形式で環境の設定が行えます。まずは、ディレクトリパスの設定です。「Static web path」というテキストボックスに「/MT4/mt-static」と入力し、「開始」ボタンをクリックします。
図:Movable Typeの設定
自動的にシステムチェックが行われます。ここで「オプションのPerlモジュールがいくつか見つかりませんでした」というメッセージが表示されますが、必要に応じてインストールすればよいので、ここでは先に進むことにします。「次へ」ボタンをクリックしましょう。
図:Movable Typeのシステムチェック
3-2. データベースの設定
次にデータベースの設定です。今回はMySQLを使用しているので、データベースの種類として「MySQL」を選択します。データベースサーバーは、同じサーバーを使用しているので、初期設定のまま「localhost」とします。データベース名は、上記手順で作成したデータベース名を指定します。そしてユーザ名、パスワードはMySQLの設定値をそれぞれ指定して「接続テスト」ボタンをクリックします。
図:データベース設定
接続テストが行われ、問題があればエラーメッセージが表示されます。エラーとなった場合には、設定を見直し、改めて接続テストを行いましょう。問題がなければ「次へ」ボタンをクリックします。
なお、「現在の設定を表示」というリンクをクリックすると、前ステップと同様のフォーマットで設定値が表示されます。
3-3. メールの設定
まずメール送信プログラムを指定します。@YMCのVPSではsendmailがインストールされているので、これを指定します。すると、自動的にパスが表示されます。テスト用のアドレスを指定し、「テストメールを送信」ボタンをクリックしてテストを行います。
図:メールの設定
テストメールが届くことを確認したら、「次へ」ボタンをクリックします。
構成ファイル(設定ファイル)が保存できないというエラーメッセージが表示されます。これは、cgi-binのアクセス権の設定によるものです。そこで「ウィザードで作成されたmt-config.cgiを表示する」というリンクをクリックします。
図:構成ファイルが保存できないというエラーメッセージ
すると、テキストボックスが表示されます。この内容をコピーして「mt-config.cgi」というファイル名を付けテキストファイル形式で保存します。このとき、@YMCのVPSサーバーで使用しているCentOSでは文字コードが「UTF-8」なので、これに合わせておくとよいでしょう。
設定ファイルの中に日本語は含まれないので、特に問題はないと思いますが、無用なトラブルを避けるために、文字コードを合わせておくことをおすすめします。
保存したファイルをアップロードし、mt.cgiと同じ階層のディレクトリに移動してパーミッションを設定します。
# cd /home/admin/ ←設定ファイルアップロードディレクトリに移動
# mv mt-config.cgi /var/www/cgi-bin/ ←設定ファイルを移動
# chmod 755 /var/www/cgi-bin/mt-config.cgi ←パーミッションを変更
4-1. Movable Typeへのログイン
Movable Typeの管理画面を表示しましょう。Webブラウザで「http://www.vps-tokusyu.com/cgi-bin/mt.cgi」を指定します。すると、初期ユーザアカウントの設定画面が表示されます。それぞれの項目を指定して、「次へ」ボタンをクリックしましょう。
図:初期ユーザアカウントの作成
最初のブログを作成します。URL、公開パスの初期値は「BLOG-NAME」となっていますが、変更できます。公開ディレクトリ以下に作成した「MT4」を指定し、「インストール」ボタンをクリックします。
図:最初のブログを作成
データベースの初期化が行われるとともに、インストールが実行されます。インストールログがテキストボックスに表示され、「Movable Typeにサインイン」というボタンが表示されます。このボタンをクリックしましょう。
図:Movable Typeにサインイン
するとブログのページが表示されます。
図:My First Blog(画像をクリックすると拡大表示します)
以上でインストールは完了です。
4-2. VPSでブログをはじめよう!
アクセス権との兼ね合いで若干手間がかかる点もありますが、初期設定はウィザード形式で実行できるので比較的容易にインストールすることができます。VPSサーバーに自分でインストールしても問題なく使用できますので、この機会にインストールしてブログをはじめてみてはいかがでしょうか?
Movable Typeを企業で使用する場合、ライセンスを購入する必要があります。1サーバー、5ユーザのライセンスは52,500円と比較的安価ですので、導入しやすいでしょう。
また冒頭に紹介したようにブログツールには、Movable Type以外にも「a-blog」や「Word Press」などがあります。これらも実際にインストールして、比べてみてはいかがでしょうか?
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提供:株式会社 アット・ワイエムシー
企画:シンクイット 企画営業部
制作:シンクイット 編集局・制作進行部
掲載内容有効期限:2007年9月31日
当記事は、右記サイトに掲載された時点の最新情報に基づき執筆されています。古い情報が含まれている可能性がありますので、ご了承ください(2012年12月時点)。